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綺麗に織物を織るコツ①-織地の「耳」を考える-


綺麗に織物を織るコツ①-織地の「耳」を考える-

手織をしていて、さあ織り上がった!という時に、出来上がった織り地の両端がガタガタとゆがんでしまっていて、がっかりした事はございませんか?


そんながっかりな思いをしないように、「耳」と呼ばれる織り地の両端まですっきりと綺麗に織るためのコツをご紹介します。


この記事ではまず、耳の部分の設計の仕方についてご紹介していきます。

 

目次





 

耳を綺麗に織るための経糸の設定について


耳の部分を綺麗に織るためには、耳の部分の密度を変える事が効果的です。

市販に販売されている生地も、耳のところだけ少し厚手になっていますよね?

綺麗に織るために必要となる耳の幅は、最低でも両端それぞれ2羽分、糸の細さや織組織の影響にもよりますが、最大1cmほどで大丈夫です。


例外的に耳の密度を変える必要がないのは、リップスマットのように極端に経密度の高い織物などです。

このような織物に関しては、耳の部分だからといって特に経糸の密度を変える必要はありません。


反対に言えば、それ以外の織物では耳の密度を意識すると良いでしょう。

特に、透け感のあるショールなどの薄手の織物の耳をまっすぐ綺麗に織りたい!という場合には、耳の部分の密度を高くするのは有効な方法と言えます。


 

耳の経密度を高くする方法


耳を綺麗に織るためには、耳の密度を高くすると良い…

では、密度を高くするためにはどのような方法があるでしょうか?


基本の方法は2つあり、経糸の太さ・素材・技法などによって使い分けます。


耳の経密度を高くする方法-経糸を丸羽で入れる

ひとつ目の方法としては、上の図のように耳の部分の経糸を2本1組で一つの筬目に引き込む(丸羽で入れる)方法です。

この方法をとれば、筬通しの段階で簡単に耳の部分の経糸を倍密度にできます。


この方法は、平織や組織織の作品を制作する場合に適しています。特に、透け感のある織り地や薄手の織り地を織る場合にはこの方法をお勧めします。

中細以下の細くてストレートな糸を使って織る場合にもこの方法が向いています。


逆に繊維が引っかかりやすい糸や、擦れに弱い糸が耳の部分に使われている場合は向きません。

そういった場合、筬目の中で糸同士が絡んでしまって開口しなくなって目飛ばしの原因になってしまったり、擦れて経糸が切れてしまう原因になります。

そもそもそういった糸は、経糸向きではありませんが、ポイントに入れたいなどの理由で経色に使う場合は、次にご紹介する方法を使って耳を作りましょう。



耳の経密度を高くする方法-経糸を2本取りにする

ふたつ目の方法は、整経の段階で耳の部分の経糸を2本取りにする方法です。

厳密に言えば経密度を高くしているわけではありませんが、2本取りにすることで他の場所の経糸よりも太さが増し、耳として安定します。


この方法なら筬目の中で糸が交差することもなく、擦れに弱い糸を経糸に使った場合でも、糸を傷付けずに織ることができます。


また、ブロック織やバウンド織のような、緯密度が高い織物の場合もこちらの方法が向いています。

 

耳を意識した織物組織の設定について


耳を綺麗に織るためには、その織物の組織がどのようなものであるかも重要になります。


平織のように耳の部分が交互に開口する組織なら問題はありませんが、耳の部分の糸が長く浮いてしまう組織は、綺麗に織るために工夫する必要があります。

まず、耳の部分で糸が浮くとどんな問題があるか整理しましょう。

例えば上の図のaのように、経糸1本に対して緯糸が4本浮く、1:4の綾織を織るとします。

この時、緯糸を切り替えずにずっと同じ糸で織るのなら、耳の部分はどうなるでしょうか?


図のbのように右から緯糸をスタートした場合は、そのまま織り進めると緯糸が引っかからずに、図のcのように経糸に対して緯糸の通らない部分ができてしまいます。

そのような部分の経糸は緯糸に抑えられていないために織巾に収まらずにひらひらと落ち着きません。

その上、端になることを想定していない経糸が端になってしまうので、織巾が不安定なガタガタとした仕上がりになってしまいます。


この問題を解決するにはどうすれば良いでしょうか?

解決方法は3つあります。

もっとも簡単な方法は、上の図のdのように、一番端の経糸に緯糸が引っ掛かるように絡めながら織ることです。

ただしこの方法は、端の部分の組織が壊れてしまいます。



それが気になる場合は、織り始める前に組織を設定する段階で、図のeのようにあらかじめ左右の耳にそれぞれ2本分ずつ、平織を織るための経糸を加えておく方法がおすすめです。

この方法ならば、織りたい組織を壊してしまう心配はありません。


とはいえこの方法にも欠点はあります。

組織にもよりますが、両端に平織を入れるためだけに綜絖枚数や踏み木の本数を増やす必要が出てきます。

綺麗に織るためなら手間が増えても構わない!という方なら大丈夫ですが、やはり、左右合わせても4本の経糸のために綜絖や踏み木をセッティングするのは労力に見合わないと思われる方も少なくはないのではないでしょうか。

さらに、組織によっては既に織り機にセットできる最大数の綜絖や踏み木を使っていて、そもそも平織を増やせない場合もあるでしょう。


そのような場合には、経糸に「浮き耳」をセットしておく方法がおすすめです。

浮き耳とは、「綜絖には通さず、筬目にのみ通す経糸」のことです。

英語では「floating selvedge」と言い、英語の手織り技法書には度々登場します。


この浮き耳に必ず緯糸を絡ませて織ることで、耳の部分で経緯が長く浮く組織でも耳を綺麗に織る事ができます。

なぜ綜絖に通さないかというと、そうすることで最初から最後までずっと上下せず、上からでも下からでも簡単に緯糸を絡ませることができるからです。


 

いかがだったでしょうか?

織地を綺麗に織るためには、この他にも緯糸の緩みの取り方を注意し、緯糸を多種使うならその切り替え部分をどう処理するか考え、組織と糸の相性を考え、使う糸同士の相性を見て......と、考えなければいけないことは沢山あります。


とは言えそのうちのひとつ、耳の部分を意識するだけでも出来上がる織地のクオリティは格段に上がります。


ぜひ、耳の部分を意識して作品の計画をたててみてください。

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