手織りの作品が織り上がって機からおろした時に、経糸の処理をどうすればいいか悩んでいませんか?
ショールやテーブルセンターなどのアイテム種別ごと・使用糸ごとにおすすめの経糸の処理の仕方をご紹介いたします。
目次
ブランケットなどにおすすめ-フリンジを作る方法①ネクタイ結び-
ブランケットや厚手のショールなど、太めの糸を使ったボリューミーな作品にはネクタイ結びのフリンジがおすすめです。糸の房が作品の雰囲気に合います。
-仕上げの方法-
まず最初に、1本のフリンジにまとめる経糸の本数を決めます。
フリンジの根本の部分が割れないように、糸の束は経密度に合わせて1cm前後になる偶数本にするのが良いでしょう。
例えば、経密度が5本/cmのものなら4〜8本程度、3本/cmのものなら4本1組程度が適切です。
糸の太さや形状によって1束にまとめる適正本数は変わります。
今回は、8本1組が適切な場合を例にとり説明していきます。
結ぶ前に経糸の本数が8で割れる数か計算してください。
割り切れる数の場合、8本1組のフリンジのみで仕上げられます。
割り切れない数の場合、余りの数と同じ本数9本1組のフリンジを混ぜる必要があります。
例えば経糸が299本の場合、8で割ると37余り3となりますので、
9本1組のフリンジを3本、8本1組のフリンジを34本作ることになります。
この時、9本1組のフリンジはどこかに固まらないよう、適度にばらけた位置に作ってください。
糸の束を半分に割ります。
上の図を参考に、片方の束をもう片方の束に巻きつけて結び、織地のきわに結び目が位置する様に調整してください。
9本1組の場合は糸を5本:4本に分け、4本の方を巻きつける側にするのが良いでしょう。
この方法では上の図にありますように、わずかに裏表でフリンジの表情が変わります。
全ての糸端をフリンジにできましたら、洗い仕上げをし、その後結び目から先の経糸をお好みの長さを残して切り揃えたら完成です。
-この方法のメリット・デメリット-
メリット
・裏表で差がほとんど無いので、作品をリバーシブルに使える
・太糸を使ったボリューミーな作品の雰囲気を壊さずに仕上げられる
デメリット
・経混みの織物の場合結び目が大きくなって密集してしまうので向かない
・ファンシーヤーンなどカットした毛先がほつれてしまう糸には向かない
・滑りやすい糸、張りの強い糸を使った作品は、結び目が解けてしまうため使えない
ファンシーヤーンを使った作品におすすめ-フリンジを作る方法②ねじねじ結び-
ショールなどの両面使えるように仕上げたい作品で、ファンシーヤーンを使った場合の経糸の処理は、断然ねじねじ結びのフリンジで仕上げられるのをおすすめします。
-仕上げの方法-
まず最初に、1本のフリンジにまとめる経糸の本数を決めます。
フリンジの根本の部分が割れないように、糸の束は経密度に合わせて1cm前後になる偶数本にするのが良いでしょう。
例えば、経密度が5本/cmのものなら4〜8本程度、3本/cmのものなら4本1組程度が適切です。
糸の太さや形状によって1束にまとめる適正本数は変わります。
今回は、6本1組が適切な場合を例にとり説明していきます。
糸を撚り始める前に、経糸の本数が6で割れる数か計算してください。
割り切れる数の場合、下撚りが3本:3本の、6本1組のフリンジのみで仕上げられます。
割り切れない数の場合、余りの数と同じ本数、下撚りが3本:4本の7本1組のフリンジを混ぜる必要があります。
例えば経糸が299本の場合、6で割ると49余り5となりますので、
7本1組のフリンジを5本、6本1組のフリンジを44本作ることになります。
この時、7本1組のフリンジはどこかに固まらないよう、適度にばらけた位置に作ってください。
捨て糸を少しずつ抜きながら作業します。
まず3本1組(必要に応じて4本1組)で時計回りに下撚りをかけていきます。
この時フリンジとフリンジの境目になる6本ごとに1度、隣の糸(7本目の糸)とクロスさせておいてください。
その際は上の図のように、直上の緯糸の上に出ている経糸は下、下になっている経糸が上になるようにクロスさせてください。
糸をクロスさせておくと、フリンジの間が割れてしまうのを防ぐことができます。
下撚りが甘いと上撚りが上手くかけられないので、織地の際まで撚りが均等になるようにかけてください。
逆に強くかけ過ぎてしまうと、今度は織地がくるくる丸まってしまうため、そうならない程度にかけてください。
下撚りの強さによって、フリンジの太さが変わります。
撚りが強いと細めの硬いフリンジに、撚りが弱いと柔らかめの太いフリンジになりますので、撚りの強さが均等になるように調整してください。
下撚りがかけられたら2本合わせて上撚りをかけて行きます。
下撚りの時と反対の反時計回りで、3:3本で1組(もしくは3:4本で1組)のフリンジになるように 撚り合わせてください。
3本1組(もしくは4本1組)で下撚りを2束ずつかけ、その2束をより合わせて1本のフリンジにします。より戻りがないように、織地の端から一定の長さ(5〜8cmほど)でフリンジごとに固結びしてください。
フリンジを作れたら洗い仕上げをし、その後結び目から1cmほど先で残りの経糸を切り揃えたら完成です。
ウールなど縮絨が効く素材の場合は結び目を切り落としても大丈夫ですが、絡みにくい素材(絹・綿・麻)の場合は必ず結び目を残してください。
-この方法のメリット・デメリット-
メリット
・裏表で差がほとんど無いので、作品をリバーシブルに使える
・ファンシーヤーンを経糸に使っても毛先がほつれにくい
デメリット
・道具を使わずにこの方法で始末をすると、手間がかかり撚り具合にムラができやすい※
・極端に経糸の太さが違う場合、フリンジごとに太さが変わってしまい、
揃えるためにはフリンジごとに撚る本数の調節が必要になる。
※このデメリットは、ねじねじ結びのフリンジを作るための道具「房撚器」を使うことで解消されます。
ストレートな糸を使った作品におすすめ-端をかがる方法-
ストレートな糸を経糸に使ったショールやマフラーなどの衣類、夏用ディバイダーなどの吊るして使う薄手のインテリアの場合、端をかがる方法がおすすめです。
-仕上げの方法-
織り始めの緯糸の糸端を、織巾の2倍程度残して3段織ります。緯糸の浮きが大きい組織の場合は、最初だけ平織などで織ってください。
織り終わりも糸端を織巾の2倍程度残してカットしてください。
利き手が右の方は右端に、左の方は左端に残しておくと作業が楽になります。
上の図は右端に残しておいた場合のものです。
3段織れましたら、残しておいた糸にとじ針を通してかがっていきます。
まず最初に一番端の経糸を巻き込むようにして、裏から表に針を動かして経糸2〜4本先(図の★の位置)から出します。針を出したところの真下から針を入れてまた同じ本数分先に出して緯糸3段をまとめます。真下から針を入れて斜め緯糸3段分、経糸2~4本先から出してまとめてかがり・・・と端まで繰り返してください。
かがり終わりの糸端は、4cmほど次の段の緯糸として織り込んでください。
織り終わりは、機にかけたまま同じようにかがります。かがった後は捨て糸は入れず、そのまま機からおろして大丈夫です。
機から外し、洗い仕上げをした後に経糸を一定の長さで切り揃えて完成です。
ファンシーヤーンを経糸に使った作品をこの方法で仕上げたい場合、切り揃える前に織地の端から一定の長さで糸を一本一本固結びしておかないと糸端がほつれてしまって綺麗に見えません。
また、この方法は、上の図のようにわずかに裏表で端の表情が変わります。
間近で見ない限り特に気になりませんが、経糸が極端に太い場合や荒めにかがった場合目立ってきますので、作品をリバーシブルに使われたい場合はご注意ください。
-この方法のメリット・デメリット-
メリット
・裏表で差がほとんど無いので、作品をリバーシブルに使える
・機にかけたまま始末ができるので、仕上げの手間が楽
・織地の端までフラットに仕上げられる
デメリット
・ファンシーヤーンを使った作品の場合、糸端に注意が必要となる。
・経糸が極端に太い場合は端処理が目立ち、極端に細く本数が多い場合は手間がかかる
テーブルセンターなどにおすすめ-三つ折りにする方法-
テーブルセンターやタペストリーなど、経糸の残りが全く見えないように仕上げたい作品は、三つ折りにして仕上げると作品としての見栄えが良くなります。
-仕上げの方法-
三つ折りで仕上げる場合は、三つ折りにするために隠れてしまう部分ができてしまいます。それをあらかじめ考慮に入れて、織りはじめと織り終わりに三つ折り分の長さを余分に織っておいてください。
機から外しましたらまず、隣り合う経糸を固く二重結びにして止めておきます。
その後、経糸を三つ折りの中に巻き込んで隠せるくらいの長さを残して切ります。
経糸の残りを巻き込みながら、裏側に向けて三つ折りにします。
その後、作品に使った糸もしくはそれに近い色の縫い糸で上の図の様にしてかがって止めます。
両端かがれましたら完成です。
タペストリー作品の場合、三つ折り分を多めにとって仕上げて、三つ折り部分に棒を入れて飾ることができます。この場合、上下に棒を通すことによって作品の形が保たれて綺麗に
見える利点があります。
-この方法のメリット・デメリット-
メリット
・作品をフラットに仕上げられる
・経糸が全く見えない分、織地を見せる作品としての見栄えが良くなる
・ファンシーヤーンを経糸に使っても別の作業を増やさずに始末ができる
・タペストリー作品の場合、飾る際の手間が減る
デメリット
・明確に裏表ができるため、作品をリバーシブルに使うことはできなくなる
・経糸を2本1組で結んでおく必要があるため、手間がかかる※
・厚地の織物の場合は三つ折りにすることで、端だけさらに膨らんでしまう
※このデメリットは、結ぶ代わりに端をかがる方法で 仕上げをしてから三つ折りにすることである程度は解消されます。
ここに紹介した方法以外にも、織り方や経糸の素材によって様々な仕上げをすることができます。
また、例えばネクタイ結びのフリンジでも、先を三つ編みにしてみたり、隣同士のフリンジをもう一度結んで装飾的にしたりなどここに挙げた方法に少しアレンジを加えるだけで経糸の仕上げのバリエーションを増やすことができます。
皆さまぜひ、いろんな仕上げ方にチャレンジしてみてください。
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