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「鬼原美希展 たびするおりびとmeets調布と映画」レポート


2023年1月21日(金)より2月23日(木祝)の期間、調布市文化会館たづくりにて開催中の「鬼原美希展 たびするおりびとmeets調布と映画」に伺ってまいりました。


綴れ織り作家・鬼原美希さんによるパワフルでエネルギーに溢れた作品は「日常の物語編」「たびするおりびと編」「あなたもおりびと編」の3部構成で展示されています。

日常の物語編では『マリッジレインボー』と題されたウェディングドレスの作品が目を引きました。

ウェディングドレスと聞くとやはり思い浮かべるのは結婚式の花嫁さん。

和装の白無垢と並んで、無垢純潔の白でこれから染まっていきます!というアピールをする衣装といったイメージです。こちらの作品では、結婚式でこの作品をお召しになった鬼原さんの今までがカラフルに綴られていて、これから染まるのではなく、ここに至るまでで自らの生活を鮮やかに染めてきた一人の人間としての魅力の詰まったドレスだと思いました。


展覧会タイトルにもある「たびするおりびと」編では、同名の連作のどれもが大変興味深い作品でした。こちらの作品は世界各地を船旅にて巡られた鬼原さんが、陸の上で見聞きしたことを題材に船上にて織った24作の小作品からなる連作です。

その土地で手に入れた糸、旅の中で手に入れたお菓子の包み紙やその他の物品を綴れに織り込んであり、鬼原さん自身の体験に属したモチーフが織られていました。

展示では作品と一緒に織り込む前の材料や作品に伴うエピソードなども掲示されており、「スケッチや日記のような感覚で制作してみた」という鬼原さんのコメントにもなるほどと思うのと同時に、織ることでより主観的に再構成されたスクラップブックのような作品だな、と感じました。

たびするおりびと編のエリアではその他にも世界各地を旅した体験を基に制作された『祈る人』や『ながらつむぎ』などの作品も展示されています。

大雨のベトナムで出会った山間民族の人々との交流の記憶に題を取った『ながらつむぎ』では、鮮やかなレモンイエローのレインコートが、現地での体験を象徴する物品として織り込まれていました。

またこの作品は綴れ織りでは表面には出てこない経糸までオレンジとブルーを一本交互に使っているため経糸がちらりと見える縁まで色鮮やかで、なぜこのように経糸までカラフルにされたのか鬼原さんに伺ったところ、「色をたくさん使いたい!と思ってたらいつの間にか」とおっしゃっていたのが印象的でした。

次のエリアでは『GO!GO!!OTENBA☆GIRL』など、鬼原さんのエネルギッシュな色使いが前面にでた作品が展示されておりました。


本展の最後には「映画のまち調布」にちなんで製作された新作『0倍速のエンドロール』も展示されていました。

こちらの作品は映画『カメラを止めるな!』をモチーフとして、裏表のはっきりした織物である綴織の、裏面まで作品として拝見できる作品となっております。三重になった円状に展示されており、円の中へと入って鑑賞でき、また作者の鬼原さん曰く、鑑賞者に作品の中に入って観てもらう事で完成する作品とのことです。

また作品の材料として映画本編のフライヤーなども織り込まれており、映画のファンの方ならこれはもしかして!となるポイントが多い作品でした。

会期中の2023年2月4日(土)には鬼原さんと『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督の創作者同士の対談イベント(事前申込制)もあるとのことですので、皆さまこの機会に是非足をお運びください。

(2023.1.29 スタッフレポート)

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