「現代の織Ⅴ 中野恵美子」レポート

更新日:2021年9月15日



この度、和歌山県熊野古道なかへち美術館にて開催された中野恵美子先生の特別展、<現代の織Ⅴ >を拝見してまいりました。

私は大学院修士課程在学中に中野恵美子先生の特別講義を拝聴する機会に恵まれ、先生の作品を初めて知りました。織の技法で芸術表現をすることを学んで間もない学生だった私は、織作品でここまで表現できるのか!と衝撃をうけ、芸術としての織の無限な可能性を感じたことを今でも鮮明に覚えております。 展覧会会場に入ると、人よりもはるかに巨大な、多彩な織の造形作品が迎え入れてくれました。実際に拝見した先生の作品は、想像よりもはるかに雄大かつ緻密な作品で、私は圧倒されるばかりでした。


数ある先生の作品のなかでも、一番実物が気になっていたのがドビー機という織り機による多層織の作品、「連なる」シリーズでした。そこには、一枚だった多層の面が立体的かつ幅広く開かれ、吸い込まれてしまいそうな壮大な世界が表現されていました。緯糸で使われた和紙は水につける工程によりギュっと凝縮されており、板締めによって縮んでいない箇所もあることが更に面白い表情を出していました。また織られた層の一つ一つの物理的な変化がハーモニーを成して、まるで何千年を経て折り重なった地層のような、長い時間を感じさせる風景が作品にこめられていました。


そして、先生がブラジル滞在中に制作された「Homage to the Earth」や「Inside and Outside」は、限られた現地の自然素材で作られた作品で、ブラジルの広大な大地を想起させるエネルギーが湧き出るようでした。特にこれらの作品からは、先生の芸術表現への沸き上がる創作への思いが土地独特の素材や空気感と融合することで、全く新たな表現として生み出されており、芸術表現の深みを感じました。


今回の<現代の織Ⅴ 中野恵美子>展覧会は、半世紀近く世界各地で研究された経験を通して、現代の織の新たな価値を引き出し続けてこられた中野先生の作品で埋め尽くされております。展覧会は2021年9月12日まで開催しております。皆様も是非とも足を運ばれてみてはいかがでしょうか。(8/28 スタッフレポート)


9/15 展覧会風景の画像を追加する共に、

   以前の文の技法説明に誤りがありましたことをお詫び申し上げます。

   右の通り訂正いたします。 (板染め→板締め)