2023年6月30日

手織りの道具「杼・シャトル」の選び方

手織りをしていて、道具に迷ったことはありませんか?

例えば、緯糸を入れるために使う杼…

「緯糸がすぐに足りなくなって、糸の継ぎが多くなってしまった」

「たくさん糸が巻けて継ぎが少なくて良いかと思ったけど織りにくい」

なんて、ちょっとした苦労でストレスを感じていませんか?

そういったちょっとした苦労は、使っている道具を変えることによって改善する場合があります。

適切な杼・シャトルの選び方を覚えて、快適に織り進めるようになりましょう。


目次

・基本的な杼・シャトルの名前と特徴

・織巾から考える適切な杼・シャトルの長さ

・緯糸から考える適切な杼・シャトルの種類

・技法から考える適切な杼・シャトルの種類


・基本的な杼・シャトルの名前と特徴

・板杼(フラットシャトル)

5mm〜8mm程度の厚みの板を加工して作られているシャトルです。

他のシャトルに比べてシンプルな形で安価で扱いやすく、手織りをこれから初めよう!という時に揃えるのに向いています。

糸の巻き方はいろいろですが、上部の画像のように左右の端にある凸部に引っ掛けながら本体に巻き付けると、緯糸を多く巻くことができます。

・シャトル

舟形で中央に空洞があり、玉管をセットするための金ヒゴと呼ばれる金属棒が渡っています。機織りの道具として一般的にイメージするのがこのタイプのシャトルです。

本体の厚みや先端部の形状、車(本体下部にあるローラー)の有無などで細かく名称が分かれていますが、どの種類の場合も糸を玉管に巻いてからシャトルにセットして使います。

玉管に糸を巻くのはボビンワインダーを用いるのが一般的です。

・ラグシャトル

正面から見ると細長い舟形ですが、側面から見るとエの字型に溝があります。

側面の溝にぐるぐると糸を巻き付けて使います。

そのため、糸を巻いた時に幅は膨れても厚みは本体の厚さ以上にならないのが特徴です。

板杼やシャトルと違い、たくさん巻いても緯糸が経糸に擦れる心配が無いため、太めの糸を多く撒きたい場合に向いています。


織巾から考える適切な杼・シャトルの長さ

板杼やラグシャトルといったような、本体に緯糸を巻いて使うタイプは、織巾に合わせて使用する杼の長さを使い分けます。

織巾が自身の肩幅以内の場合は織巾とちょうど同じ程度の長さのものを、織巾が広い場合は織巾の半分以上〜織巾の2/3程度の長さのものを選ぶと良いでしょう。

織巾に対して短すぎると経糸の開口部分に杼を通す時に、手を奥まで開口部に入れて杼を送らなければならないため大変です。逆に長すぎると杼を引き抜くために大きく腕を動かす必要ができてしまい、これもまた大変です。

どちらにせよ織巾に合わないサイズの杼を選ぶと、労力をかけて大変な思いをすることになりますので、板杼・ラグシャトルは適切な長さのものを選んで使いましょう。

巾の広い織物を織る場合は、ローラーシャトルのように経糸との摩擦が少なく開口の間を滑りやすいものを使って織ると良いでしょう。

ただしその場合も、使う緯糸に合わせてシャトルの厚みやサイズを考える必要があります。


緯糸から考える適切な杼・シャトルの種類

緯糸の太さや作りなどによっても、向いている杼・向かない杼というものがあります。

中細程度の太さの糸はスタンダードシャトルなどのシャトルを選べば問題ありません。

しかしながら例外があります。

モヘア糸など絡みやすい糸の場合は玉管に糸を巻くと、糸の毛足が絡みあってしまい、緯糸を通す時に糸が玉管から離れずらくなってしまいます。

緯糸を2本以上引揃えて巻く場合も2本の糸がズレて織りにくく、張りの強い糸は玉管から糸がズレて崩れて織りにくくなる可能性があります。

その場合は板杼を使って緯糸を入れたほうが糸が絡まることがありません。

もう1つシャトルに向かない糸に、太糸が挙げられます。

太い糸は玉管に巻くと嵩張ってしまい、「シャトルにセットできるギリギリまで巻いても、5cmも織れない!」「多めに巻いた糸がシャトルより高さが出てしまい経糸に擦れて巻きが崩れてしまった」などトラブルになってしまいがちです。

太糸の場合はラグシャトルを使うと良いでしょう。

ラグシャトルでしたら糸をたくさん巻いてもシャトル本体の厚み以上になりませんし、経糸の当たる部分が木のために滑りも良くおすすめです。


技法から考える適切な杼・シャトルの種類

最後に、技法によっては特定の物を使うとより効率的に織りやすいという場合があります。

綴織りのように、緯糸一段の中で複数の糸を切り替えながら織る場合は、経糸の間を割ってシャトルを出す必要があります。

その場合はすくい杼のように本体(特に先端部分)が薄くなっているものを使うと織りやすくなります。

先が尖った網針も板杼に比べて経糸に引っかかりにくいのでおすすめです。


以上のように、糸や技法・織るものによって適した杼・シャトルが変わってきます。

最初の時に揃えた道具をずっと続けて使いがちですが、もしかしたらその時々の制作に適した道具があるかもしれません。

なんとなく織りづらいな?使いづらいな?と思ったら、新しい道具を揃えるタイミング!と考えて、糸や作品に向いた道具がないか、ぜひ一度調べてみてください。